審査委員長
有限会社エクスプランニング代表取締役
エクステリア＆ガーデンアカデミー学長
一社）日本エクステリア設計協会会長
古橋宜昌
今年もマーヴェレックス施工コンテスト2024への多数の素晴らしい作品のご応募を頂きましてありがとうございました。 ウリンは御存知の方も多いと思いますが建築資材として使えるようになるまで２００年という長い歳月が必要となる成長が非常に遅い樹です。それ故、年輪も密になりとても硬い樹になります。母国インドネシアでは聖なる樹としてとても大切に扱われており、小さな破片さえも大切に利用されています。しかし、日本に輸入する際の品質基準は厳しく小さな割れや傷により廃材になるケースも少なくありません。このコンテストではそんなファーミンググレード材にもスポットを当て、この貴重な樹木を大切に使って頂いた作品をも評価したいという、ウリン愛に溢れたコンテストだということも大きな特徴であります。 また、ウリンは時間とともに風合いが変化してくる材料で、このことには賛否分かれるご意見もあると思いますが、私は工業製品では味わうことが出来ない経年による美しさもウリンの魅力であると考えています。その良さはヴィンテージ部門の作品を御覧頂ければお分かり頂けると思います。それ以外にも短い材料を無駄なく使う理材活用などもSDGsの観点からももっと認知して頂きたいと思っております。 人工木にはない本物の樹だからこそ実現することが出来る、風合いと心地よさをこのコンテストの受賞作品を通して多くの方に知ってい頂ければ幸いです。
E&Gアカデミー校長 古橋宜昌
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| SDGｓ理材活用®賞 審査委員長 京都大学名誉教授 京都大学生存圏研究所特任教授 金山 公三 |
SDGｓ理材活用®賞 審査委員 京都府立大学 大学院生命環境科学研究科 准教授 神代 圭輔 |
SDGｓ理材活用®賞 審査委員 三重大学 大学院生物資源学研究科 准教授 渕上 佑樹 |
ウリン材などを販売する株式会社林田順平商店が2019年から始めたマーヴェレックス施工コンテストが今年で6回目となり、多くの応募作品が集まった。このことは、次の5点を主旨としたコンテストへのご理解が徐々に広がってきたことを示すと同時に環境保全への共感の広がりでもあり、喜ばしい成果だと考えられる。
① 自然素材（木材製品）の取り込みによるガーデンプランニングの魅力の向上
② ウリン材の知名度向上と利用促進
③ 理材活用（注釈１参照）の思想の普及
④ 林田順平商店輸入商材（ウリン、ガラスブロック、ロートアイアン、スペインタイル）の利用促進
⑤ コンテストを通じた業界へのウリン材普及と自然素材の使用拡大
＊注釈１：理材活用とは、合理性のある、理にかなった活用方法のことを指す。可能な限り知恵を使い、貴重な天然資源を無駄なく有効に、かつ最適に、そして合法的に使っていくことにより、限りある地球の資源を資産として活用する取り組みである。
コンテストでは多種多様な賞が設定され、そのうちの理材活用賞について、林田順平商店が提案した「理材活用」の概念に基づき、応募者からの申請資料（写真や説明書類）を審査し、理材活用賞２点（金賞、銀賞）を選定した。また「今までに無い斬新な発想」が認められる作品をアイデア賞として２点を選定した。なお理材活用、アイデアともに優秀な応募作の場合は、理材活用を優先し重複受賞は避けることとした。今回選考された応募作品についての評価は概ね以下の通りである。
理材活用賞【金賞】（株式会社M2テクニカル 様）
大自然に囲まれた人口約１２０人の限界集落である和歌山県紀の川市上鞆渕エリアにオープンしたプライベートサウナ付一棟貸施設における施工例である。故郷和歌山を盛り上げたい思いでクラウドファンディングを活用した施工という背景もあり紀州ヒノキを多く用いた施設であるが、耐久性が求められる場所を中心として随所にウリンを利用する工夫がなされている。欲を言えば、ウリンの物理化学的特性の更なる理解が進めば、より一層の理材活用が進むと期待される。
クラウドファンディング（https://camp-fire.jp/projects/775357/view）から感じられる豊富なアイデアや企画力を活かしてTシャツ、アロマオイル等のグッズに加える新たな「ウリングッズ」の開発も期待したい。
構造物の随所におけるウリンの理材活用の実績に加えて、各種グッズなどへの今後の展開の可能性を期待させる企画力は、理材活用の将来像の一つとして参考となる点を高く評価した。
理材活用賞【銀賞】（株式会社八甲商事/Heaven’s Garden 様）
応募者がコメントで書いている通りに「中古で購入された家の改修工事の一環」としてエクステリア、ガーデンの改修施工である。アプローチ全体にウリン材を積極的に活用し、歩きやすさを向上させるとともにデザイン的にも統一感があって好印象である。すなわち、短尺のウリン材を横張りにすることで滑りづらく歩きやすいアプローチとする機能面の効果に加えて、横張りの模様がレンガ塀など周囲の雰囲気とも合っていてデザイン面での効果も同時に実現している。目隠しフェンスにもウリン材を使用しており、床材と調和したデザインを実現しつつ大量の理材活用を達成している。デザイン面と機能面を両立して理材活用した好例として高く評価した。
アイデア賞（下澤秀一 様）
ウリンの端材を自分で手彫りしてナタの柄を作製しており、ウリン材の重厚感がとても良い形で作品として表現されている。主に白樺のブロックを手彫りして自分だけのマグカップ等をつくるククサ（kuksa）が流行ったが、これに通じる魅力も感じられる。ナイフや包丁の柄に木材が利用されている例は多く、用途に応じて軽いものから重いものまで多様である。しかしながら更なる重量感が要求される場合には金属が使用されていた。本応募では比重が１を超えるウリンを利用することで、従来以上の重厚感を実現しており、人が直接的に触れる所に、ウリンの端材を利用していくというのはとても良いアイデアだと感じた。また、軽量木材では必要となるオイルフィニッシュなどの表面加工が必ずしも必要ではないことも魅力である。端材に付加価値をつけ、ウリンを身近な生活の中に取り入れることができる良いアイデアだと高く評価した。
アイデア賞（関西不動産販売株式会社 様）
耐久性の高いウリンの土留め板を道路から建物へ上がる階段に使用したもので、ウリンの高耐朽生という特徴を活かした用途である。このような施工例を見ると、短尺材の利用例として適しているのみではなく、デザイン的にも斬新でアイデアに富んでいることが感じられる。機能面に加えてデザイン面でもウリン利用の新たな選択肢を提供した新たな発想として高く評価した。今後も機能面での特長利用に限定することなく、合わせ技とも言うべき「デザインを始めとした新たな価値の追加」というアイデアにより、ウリン利用の更なる推進の可能性を示したことは、今後の利用方法の新たな指針の一つとしての期待が大きいものである。
最後に、今後への展望と期待は次の通りである。
SDGs（持続可能な開発目標）の 17 の目標、169 のターゲットの中に「森林の持続可能な経営」、「資源利用効率の向上」などが含まれている。さらにCN2050（2050年カーボンニュートラル）、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、二酸化炭素回収、有効利用、貯蔵）が喫緊の課題とされ、実現に向けて政府が策定した「グリーン成長戦略」の 14 分野の中には木材産業と密接に関連した項目が含まれている。
このような背景から、木材関連産業は責務を強く意識することが望まれると同時に、産業が飛躍する絶好のチャンスでもある。その際に、経済性などの従来の価値観に加えて、「環境配慮」、「働き方改革」、「IoT（モノのインターネット）などの新たな価値基準にも十分な取り組みが求められる。
マーヴェレックス施工コンテストが今年で6回目となり、年を重ねるごとにコンテストの趣旨を踏まえた優れた応募作品が増えてきた。今回受賞した作品以外にも優れた施工例が多く認められたので、今後も、株式会社林田順平商店が主催する施工コンテストに、優秀な発想とそれを支える技術に基づく応募が多数集まり、木材関連産業を発展させ、ひいては SDGsやCN2050へも貢献することを期待する。 （以上）
SDGｓ理材活用®賞 審査委員長 金山公三
