ウリン材などを販売する株式会社林田順平商店が、マーヴェレックス施工コンテストを昨年から始めて多くの応募作品が集まり、今年も昨年を上回る多数の優れた応募が有った。このことは、次の5点を主旨としたコンテストへのご理解と共感に基づくものと考えている。
- 自然素材（木材製品）の取り込みによるガーデンプランニングの魅力の向上
- ウリン材の知名度向上と利用促進
- 理材活用（注釈１参照）の思想の普及
- 林田順平商店輸入商材（ウリン、ガラスブロック、ロートアイアン、スペインタイル）の利用促進
- コンテストを通じた業界へのウリン材普及と自然素材の使用拡大
＊注釈１：理材活用とは、合理性のある、理にかなった活用方法のことを指す。可能な限り知恵を使い、貴重な天然資源を無駄なく有効に、かつ最適に、そして合法的に使っていくことにより、限りある地球の資源を資産として活用する取り組みである。
コンテストでは次の５つの賞を設定した。
- ウリンデッキのあるお庭賞（世界最強木材でお庭をプロデュース）
- MarvelEX賞（お庭に彩りを加える）
- 理材活用賞（「ウリン道」を極める）
- アイデア賞
- 販売店奨励賞
このうちの理材活用賞について、林田順平商店が提案した「理材活用」の概念に基づき、応募者からの申請資料（写真や説明書類）を審査した。またアイデア賞に関しても同様の申請資料を審査し、理材活用賞３点（金賞、銀賞、銅賞）およびアイデア賞４点を選考した。今回選考された応募作品についての評価は概ね以下の通りである。
■ 理材活用賞【金賞】（株式会社八甲商事 Heavens Garden 様）
随所に短尺材を利用すると長尺材の場合よりもばらつきのある見た目になるが、自然の中ではそれがかえって景観と調和することを示した新規な発想である。 短尺材の有効利用と自然との共生を両立させるデザインによって圧倒的に大量のウリン材活用を実現しており、理材活用の好例と思われる。自然との共生が求められる施工現場での模範的な参考となる施工例として高く評価した。
■ 理材活用賞【銀賞】（有限会社海馬工苑 様）
幅だけでなく厚みも不揃いな材を組み合わせた木塀は、新規性かつ優れたデザイン性を明瞭に示すものである。デッキ材以外への用途の拡がりを促進するのみならず、そのデザインの実現に短尺材が必要不可欠な役割を担っており、理材活用に関する新しいモデルケースを提示している。理材活用を意識した施工において、単なる短尺材のみではなく幅や厚みも不揃いな材を使うというコンセプトは広く参考にして欲しい好例として高く評価した。
■ 理材活用賞【銅賞】（グランプガーデン 様）
狭い空間のリフォームと短尺材利用との相性の良さを感じる事例である。施工前の写真も添付されており、空間が劇的に素晴らしくなったことを実感した。短尺材のみで施工するという理材活用でも、お客様の要望に対して見事に応えることができている。戸建て住宅横の狭小スペースであっても、ウリン材の理材活用により作られた空間が、生活をより豊かにすることを示す好例であることを高く評価した。
■ アイデア賞（株式会社プランニューエフ 様）
広大なお庭に短尺材をあえて不揃いになるように配置することで、デザイン性を高めて空間に彩を与えている好例である。今後植物が生育していく中で景観が素晴らしいものに変化していく様子に大きな期待を感じさせる。現在のみではなく将来も見据えたアイデアを高く評価した。
■ アイデア賞（studio YAMAMORI 様）
市街地のマンションであっても、室内空間・バルコニー全体を素敵にデザインし、その中にウリンを上手く配置することによって生活が豊かになるという可能性を示した好例である。ウリン材を理材活用する際の施工性を高めるアイデアも工夫されており、他の参考になる例として高く評価した。
■ アイデア賞（株式会社みらいふ 様）
トラック荷台は外観はジュラルミンだが内部の床材はアピトンが使用されている。これは耐摩耗性や適度な摩擦係数の観点からの選択である。今回の軽トラック荷台（屋根なし）へのウリン材の利用は、上記の理由に加えてウリンの持つ耐候性、耐久性を活かしたアイデアとして高く評価した。
■ アイデア賞（株式会社北浦木工 様）
庭の中の小さな池周辺にデザイン的なアクセントをつけるために木材利用は有効と思われるが、耐水性や耐久性が問題となる。これらが優れたウリンの特徴を活かした使い方をしており、珍しい景観を実現していることを高く評価した。
SDGs（持続可能な開発目標）の 17 の目標、 169 のターゲットの中に「森林の持続可能な経営」、「資源利用効率の向上」などが含まれており、木材関連産業は責務を強く意識することが望まれると同時に、産業が飛躍する絶好のチャンスでもある。しかしながら、成長が期待できる分野には他産業からの参入も多くなるので、たゆまぬ技術開発やアイデア創出の努力が必要である。
その際に、今回の「理材活用」の価値観を活動の中心に据えることが重要である。
今回受賞した7点以外にも優れた施工例が多く認められたので、今後も、株式会社林田順平商店が主催する施工コンテストに、優秀な発想とそれを支える技術に基づく応募が多数集まり、木材関連産業を発展させ、ひいては SDGsへも貢献することを期待する。
審査委員
金山 公三（京都大学）
神代 圭輔（京都府立大学）
渕上 佑樹（三重大学）
